実施 2024.05 ・ 更新 2026.08.17
三井住友海上、事故対応の通話記録を音声認識と生成AIで自動要約し先行導入へ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 通話のたびに記録作成へ追われている
- システム入力の手作業が重い
- 顧客と向き合う時間が足りない
どのようなAIの取り組み?
音声認識と生成AIで事故対応の通話内容を自動でテキスト化・要約し、経過記録づくりの省力化を検証したうえで一部拠点への先行導入に進んだAI取り組み
業種
損害保険(金融・保険)
取り組み領域
事故対応業務の通話記録・システム登録
使ったAI
音声認識AIと生成AI(Azure OpenAI Service)
主な成果
実証実験で有効性を確認し、一部拠点で先行導入を開始
三井住友海上火災保険は、事故対応業務で交わされる通話の記録づくりを自動化するため、日本電気(NEC)と共同で実証実験に取り組みました。開発されたのは、事故関係者との通話をテキストに変換し、生成AIが要点をまとめるところまでを一続きにしたシステムです。文字起こしにはNEC独自の音声認識技術を用いた「NEC Enhanced Speech Analysis -高性能音声解析-」を使い、誰が話しているかを聞き分ける機能に加えて、事故対応で頻出する専門用語を学習させています。要約側にはAzure OpenAI Serviceを使い、AIがまとめた内容を担当者が確認したうえで損害サービスシステム「BRIDGE」へ登録する運用フローを整えました。実証実験で有効性が確かめられ、一部の保険金お支払センターから先行導入が始まっています。
出典:0527_1.pdf 発行元:三井住友海上火災保険株式会社、日本電気株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
事故対応の現場では、顧客を含む事故関係者と交わした通話の内容を担当者が経過記録として書き起こし、損害サービスシステムへ登録する運用が続いていました。一貫したサービスを届けるうえで欠かせない作業である一方、その分だけ担当者の時間は記録づくりに吸われ、迅速で丁寧な対応や防災・減災といった新しい価値提供に手が回りにくくなっていました。
編集部の見立てでは、困りごとの中心にあったのは記録の量そのものではなく、通話という流れて消えていく情報を人の頭で整理し直し、システムの型に入れ直すという二重の変換作業だったのではないでしょうか。聞きながら理解し、終わってから思い出して書く。この工程が残る限り、担当者がどれだけ手慣れても消費する時間は減りにくい。省力化すべき対象は記録という成果物ではなく、そこへ至る変換の手数だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
要約の品質を、要約モデルではなく手前の音声認識で作り込んだ切り分けが効いています。事故対応で頻出する専門用語をあらかじめAIに学習させ、話し手を識別する機能と組み合わせることで、テキスト化の土台を固めました。要約は入力されたテキストの質にそのまま引きずられるため、誰の発言か混ざっていたり用語が崩れたりしたテキストからは、後段の生成AIがどれほど高性能でも実務に耐える記録は生まれません。難所を後工程に持ち越さず前工程で潰した設計が、この構成の要と言えます。
AIの出力を直接システムへ流さず、担当者の確認を挟んでからBRIDGEへ登録する運用フローも、実運用を成り立たせた判断でしょう。経過記録は後の対応で判断材料として参照される文書であり、誤りを含んだまま残せない性質を持ちます。人を完全に外して自動化する道を選ばず、担当者の役割を書く人から確かめる人へ移したことで、精度への不安を抱えたままでも現場に載せられる形になったと見ています。
音声認識と要約を別々の道具として配るのではなく、通話から登録までを一本の流れとしてつないだ設計も見逃せません。技術面をNECが担い、業務要件と検証の場を保険会社側が持ち寄る共同開発の体制が、現場の言葉づかいや運用手順に合わせ込む余地を生んでいます。加えて、いきなり全社へ広げず、小さく試して有効性を見極めてから範囲を伸ばしていく段取りは、業務の停滞が顧客対応に直結する領域で選ばれた現実的な進め方です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験を通じて経過記録業務の自動化に有効性があることが確認され、一部の保険金お支払センターで先行導入が始まりました。記録業務の効率化で生まれた時間を顧客対応の充実や事故対応の品質向上につなげることは、これから確かめていく期待の段階にあります。今後は効果とリスクを検証しながら適用範囲を段階的に広げ、2024年内に全国の保険金お支払センターでの利用開始を目指す計画で、損害保険業界に特化したLLM(大量の文章を学習させた言語モデル)の採用も検討課題に挙がっています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、通話や面談が業務の中心にあり、その内容を決まった様式でシステムに残す運用が定着している職場です。使われる専門用語の範囲がある程度限られていて、過去の記録や用語集といった学習させる材料が社内に蓄積されているほど、文字起こしの精度は引き上げやすくなります。
反対に、記録として残す価値が発言内容そのものではなく、担当者が現場で下した判断や相手の反応の機微にある業務では、要約に置き換えられる部分が限られます。やり取りがもともと短く定型的な窓口も、確認の手間が元の作成時間に近づいてしまい、省力化の実感が出にくいでしょう。この事例が人による確認を残したように、AIの出力を誰がどこまで見るのかを決めないまま入れると、負担の付け替えで終わる恐れもあります。
手はじめに、実際の通話を一本だけ文字起こしにかけ、社内で日常的に使う言い回しがどれだけ正しく拾えるかを見てみてはいかがでしょうか。そこで崩れた言葉が、そのまま学習させるべき用語の候補になります。
この事例は2024年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:音声・音響
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
三井住友海上火災保険株式会社
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