実施 2025.07 ・ 更新 2026.08.17
ANAが乱気流予測にAI、パイロットの報告数万件を学習して正答率86%
プロジェクト期間:3年以上
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 天候の変化が読めず安全面が不安
- 決まった指標だけの予測に限界
- 現場の報告が使われず眠っている
どのようなAIの取り組み?
気象データとパイロットの揺れ報告を深層学習させ、日本上空の乱気流予測で正答率86%に到達したAI取り組み
業種
航空運送業(運輸)
取り組み領域
運航/乱気流の予測
使ったAI
深層学習による乱気流予測システム
主な成果
日本上空の予測モデルで正答率86%
航空機の揺れをもたらす乱気流は、気象条件や地形が複雑に絡み合うため予測が難しく、ANAホールディングスは2019年から慶應義塾大学との共同研究に着手しました。実際に採用されたのは、同大学発のベンチャー企業であるBlueWX株式会社が開発した、深層学習(大量のデータから特徴を自動的に見つけ出すAIの手法)を用いる予測システムです。多数の気象情報に加え、10年以上にわたって集まったパイロットからの揺れの報告数万件を学習させ、ANAグループの2,500名を超えるパイロットによる4年間の評価を経て、精度と信頼性を高めていきました。日本上空を対象とした予測モデルでは正答率86%に達し、正式に導入されています。
出典:ANA、世界初「日本発AIスタートアップのBlueWX が開発したAI(深層学習)による乱気流予測システム」を正式導入|プレスリリース|ANAグループ企業情報 発行元:ANAグループ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
乱気流は風速や風向きの変化から生じますが、気象条件と地形が複雑に影響し合うため、どこで起きるのかをあらかじめ言い当てるのが難しい現象です。従来の予測は定型的な指標をもとに組み立てられており、予測した位置と実際に揺れが報告された位置が一致しないケースもありました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは計算の細かさが足りないことではなく、「実際にどこで揺れたのか」という答え合わせの材料が予測の側に戻っていなかったことにあります。パイロットは飛行のたびに揺れを報告しており、現場には答えにあたる記録が積み上がっていました。それでも、定型の指標で構成された予測手法には、その答えを取り込む口が用意されていなかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
この取り組みの軸になったのは、一般的な気象情報に、パイロットが残してきた揺れの報告を重ねて学習させた設計です。報告は10年以上にわたって数万件が蓄積されており、いつ、どのあたりで、どの程度の揺れが起きたのかという実際の記録がそろっています。気象データだけを眺めていては指標に落としきれなかった乱気流の特徴を、深層学習が実測の記録と突き合わせながら捉えられるようになった点に、方式そのものの転換があります。
精度を現場の納得へ接続したのは、2,500名を超えるパイロットを対象に4年をかけた評価プロセスです。当たり外れを数値で測るだけなら、開発側だけでも短い期間で回せます。それでも実際に操縦する人たちの反応を継続的に取り込む進め方を選んだのは、乱気流予測が「合っているか」だけでなく「頼りにして操縦の判断を変えられるか」まで問われる用途だからでしょう。使う人が評価者を兼ねる開発の組み方は、安全に関わる予測AIでとりわけ効いてきます。
大学発のベンチャーであるBlueWXが予測システムそのものを開発し、航空会社側が現場のデータと評価の場を担うという役割分担も、この進め方を支えています。さらに世界中の航空会社から追加で取得した乱気流情報でモデルを鍛え直し、日本上空から対象を広げていく順序がとられました。データの厚い領域で先に形にしてから適用範囲を伸ばす手順は、信頼性を落とさずに使える場面を増やすための現実的な選択です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
AIが乱気流の発生に関わる特徴を的確に捉えられるようになり、日本上空の予測モデルでは正答率86%に到達しました。従来は乱気流の報告情報と予測位置が食い違うことがありましたが、新しいシステムでは両者が正確に一致することが確認されています。ANAはこれを正式に導入し、運航の安全性と快適性の向上、そして搭乗する人が安心できる環境の強化につなげました。予測の正しさが位置の単位で検証されていることは、成果の確かさを支える材料と言えます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、現場が長年にわたって「いつ・どこで・何が起きたか」を記録し続けていて、その記録を気象や環境のデータと時刻・場所で突き合わせられる領域です。海上の波の高さの予測や、荒天時の配送ルートの見直しなどは、条件が近いでしょう。逆に、記録が「揺れた」「荒れた」といった主観的な強弱だけで、発生した時刻や場所が特定できない形で残っている場合、同じ組み立てはそのままでは機能しません。狙う事象がめったに起きず、学習に足る件数が集まらないときも同じです。
最初の一歩としては、手元の報告や日報を数件開いて、発生の日時と場所がどこまで特定できる粒度で書かれているかを見てみてはどうでしょうか。粒度が足りないと分かれば、報告フォーマットに時刻と位置の欄を一つ足すところから始められます。
この事例は2025年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
BlueWX株式会社
慶應義塾大学発のベンチャー企業。気象解析・予報およびその提供、解析・予報を活用した対応策のコンテンツ企画、制作、販売を行う。AI(深層学習)を用いた乱気流予測システムを開発し、国内外の航空会社へ販売している。
全日本空輸株式会社(ANA)
出典・参考情報
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